どんな時に扁桃摘出手術が必要になるのですか

手術は大きなものであれ小さな簡単なものであれ、出来ることならば「手術をしないで治したい」と思うものです。
中には、喉の痛みがつらくて唾を飲み込むのも痛いし息をするのも大変だと言う場合は、「こんなにつらい思いを1年に何回も繰り返すくらいなら、手術をして楽になりたい」と願う人も少なくありません。
手術で痛かったり苦しかったりするのは一時的だけど、扁桃炎を何度も繰り返していては、ずっとずっと痛くて苦しい状態が続きます。

手術の適応に関しては、現時点では日本にはガイドラインのような判断指針は定められていませんが、施設ごとに大まかな判断の目安は定めているようです。
施設によって多少の違いはありますが、次のように考えているケースが多いです。

反復する扁桃炎の場合や睡眠時無呼吸症候群がある場合、病巣疾患や扁桃周囲膿瘍の既往があったり抗菌薬に対するアレルギーがあるケース、扁桃炎の症状が重篤で全身症状を来している、周期的な発熱やアフタ性口内炎や咽頭・扁桃炎がある場合です。
反復する扁桃炎と言うのは、どの程度の反復なのでしょうか。
アメリカやイギリスの小児扁桃摘出術のガイドラインでは、1年に7回以上または1年に5回以上を2年間、または1年に3回以上を3年間となっています。
1年に7回ともなると、2か月に1回以上です。
楽になったと思って喜んでいたらそれも束の間で、また喉が痛くなったり飲み物を飲むのも食べるのも痛いと言った状態になるのですから、かなりしんどいでしょう。
患者さん自身も、手術でも何でもして楽にして欲しいと思うようです。

睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が10秒間以上続けて止まる無呼吸を繰り返す疾患です。
睡眠の質も悪くなるし、高血圧や糖尿病や突然死のリスクも上がります。
また、日中の眠気の為に集中力が低下して交通事故や機械の操作中の事故などにもつながるおそれがあります。
太っている人に多い病気だという認識が強いかと思いますが、扁桃肥大で気道が狭くなっても睡眠時無呼吸症候群になることが多いです。

病巣感染は、ある部位に限局した慢性炎症があるために他の臓器に二次的な障害が及ぶことを言います。
IgA腎症の患者さんが一例になります。
IgA腎症の場合は、扁桃摘出とステロイドのパルス療法(大量投与)が行われるケースが多いです。

何でもかんでも手術で切ってしまうのは乱暴すぎますが、手術をしないでいつまでも苦しい思いをし続けるのもつらいものがあります。
どこかで線引きをしないと、漠然とした治療をズルズルと続けることになるので、上記のような判断指針を参考にしてください。

小児の扁桃摘出は議論が分かれます

小児の場合は、大人以上に手術には拒否反応を示すことが増えるでしょう。
親御さんも「大人でも手術だなんてそんな痛くて苦しいことは嫌なのに、まだ小さいのに」という気持ちになります。
出来ればお薬で何とかならないのかと思う気持ちが強いです。
麻酔に対する不安も強いのでしょう。

正直、小児に対する扁桃摘出手術の適応は、今の日本では専門医の間でも議論が分かれています。
それは、扁桃という器官が免疫組織としての役割を担っているからです。
免疫をつかさどっている組織を無くしてしまうということが後々どのような影響を及ぼすのかということを、多くの専門医は気にします。

免疫と言うのは、ウイルスや細菌などの人間の体にとっては外敵と言えるものを排除するシステムです。
小児の場合はまだまだこの免疫システムがしっかりと完成されていません。
できれば大人になって免疫システムがしっかりと整うのを待ってから手術をするのがベターです。

また、扁桃は加齢とともに萎縮して小さくなります。
大人になれば自然寛解(自然に治る)が期待できるので、それまでは何とか乗り切って欲しいという想いもあるのでしょう。

しかし、小児で扁桃肥大やアデノイド増殖症があって、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠時の様子を親御さんから聞いたりビデオに撮影したりして、手術を検討することもあります。
そしてIgA腎症を合併している場合は、ステロイドパルス療法と共に扁桃摘出手術を行うというのが一般的な治療方法となっています。

手術を受けるかどうかは担当医ともよく相談して、メリットやデメリットをしっかりと認識したうえで決めましょう。
親が納得することなく不安なままで子供に手術を受けさせたのでは、その不安はお子さんに伝わります。
分からないことや不安なことは医師や看護師に尋ねて、納得した上で手術を受けてください。